カルチャー備忘録

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【書評 #1】原田マハ『楽園のカンヴァス』

本作を読んで、アンリ・ルソーという作家に興味を持った。

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そこで先日、国立近代美術館へ行き、アンリ・ルソーの『第22回アンデパンダン展に参加するよう芸術家達を導く自由の女神』を見てきた。素朴派の絵画に親しみはなかったが、完成度・芸術性の高さに魅せられた。本作を読んで、アンリ・ルソーという画家に親しみを抱いていたから、彼の描いた絵画を食い入るように見てしまった。

この小説に関して、他のレビューで絶賛されていることに共感することはできる。しかし、僕は講評会においての2人の主張は、陳腐であったと感じてしまった。ティムと織絵、二人ともが研究者であるのだから、論理的な説明で僕らを驚かせてほしかった。

他の人のレビューを読んでいて、「前半は読むのに時間がかかったが、後半はスラスラと読んでしまった」というものがあった。僕は、読むスピード自体は前半も後半も一律であったが、どちらかといえば、前半の方が楽しめたように思う。後半の畳みかけるような伏線回収に、どちらかといえば興醒めしてしまった。なんというか、物語ができすぎており、現実感を欠いているという感想を抱いた。

ここまで、なんだか否定的な感想を書いている。しかし、僕は本作が嫌いなわけではない。というか、むしろ好きだった。どこが好きなのかと言えば、それは、この作品が極めて実際的だからだ。フィクションではあるものの、アンリ・ルソーパブロ・ピカソなどの有名画家が多く登場し、彼らの史実に基づいて物語が構成されている。そのような作風から、この作品は極めて実際的だと感じた。