カルチャー備忘録

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【映画評 #9】『きっと、うまくいく』大切な親友を探しに奔走する娯楽大作

『きっと、うまくいく』を見た。2009年に制作されたインド映画だ。インド映画を見るのは初めてだった。序盤、音声は英語かなと思って耳を澄ましていたが、ヒンドゥー語だと気がつき、聞き取るのを諦めた。監督は、ラージクマール・ヒラーニ氏という方らしい。インドの映画監督の名前はよく知らない。まあ、この監督の名前は覚えておこうと思う。

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主演のランチョー役は、アミール・カーンという俳優だそうだ。彼は大学生役を演じていたが、撮影当時、実年齢は44歳だったというから驚きである。余談だが、彼はかの有名なアメリカのラッパー、エミネムにそっくりだった。また、ランチョーがエミネムに似ていることに重ねて言及しておきたいのが、ヒロインに関してである。ヒロインであるピア役を演じたのは、カリーナ・カプールという女優らしい。彼女は、(メガネ姿であったからかもしれないが)、アンジェラ・アキに似ていた。

物語の主軸は「ランチョーという親友を探しにいく」というものだったと思う。このような、大切な人を探しにいくというプロットは、他の映画でもしばしば目にする。今具体例は浮かばないが、思い出したらまた言及したい。

物語の時間軸は、現在だった。現在から、過去を回想する形で、大学時代のエピソードが語られる。現在は、3人ともが成功しており、そのような現在がわかっているから、穏やかな気持ちで回想シーンを鑑賞することができた。ファルハーンやラージューの現在の姿が、序盤で描かれていた。ファルハーンは飛行機で旅行に行くような生活の余裕があり、ラージューには美しい妻がいて、幸せそうな生活をしていた。そのような現在がわかっているからこそ、過去の苦学生時代のエピソードを、笑える過去のコメディーとして楽しめたのかなあと感じた。彼らが通っていたインド工科大学は、エリートが大学であり、アメリカでいうマサチューセッツ工科大学のような教育機関らしい。だから、彼らの成功している現在にも納得がいく。

ウイルス学長が、ランチョーにペンを渡すシーンが好きだった。ランチョーは、工学的な知識を生かして掃除機を改造し、赤ん坊を引き抜くことで学長の娘の出産を助けた。それを受け、ウイルス学長は、ランチョーにペンを渡したのだった。

また、ラージューが自殺未遂をするシーンも印象的だった。ウイルス学長から自分が退学するか、ランチョーを退学させるかと追い詰められ、その重圧で窓から飛び降りたのだった。ラージューは、神頼みを習慣にしていたことからもわかるように、精神的支えを必要としていた。貧乏な家庭の出身で、家族を支えなければならないというプレッシャーもあったと思う。学歴・就職のプレッシャーがある現代の日本にも通ずるものを感じ、印象的だった。

最後に、タイトルのモチーフにもなっている「アール・イズ・ウェル」について言及したい。この言葉は、本作の主人公の一人であるランチョーの口癖だった。何か困難が立ちはだかると、「アール・イズ・ウェル」と自分に言い聞かせ、困難を乗り越えた。この映画は娯楽映画であるし、このような描写には、僕も元気をもらった。しかし、自分に何かを言い聞かせるという行為は、自分に嘘をつくことに繋がるから、必ずしも良い結果に繋がるとは限らないと考えている。

ここまで理屈っぽく、好き勝手に色々書いてきたが、僕はこの映画が大好きだった。辛いことがあった時にこの映画を見返したら、元気をもらえると思う。