カルチャー備忘録

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【映画評 #8】『嘘を愛する女』監督:中江和仁

最近、洋画ばかり見ていた。その反動もあってか邦画が見たくなり、『嘘を愛する女』を視聴した。ネットフリックスで見た。監督は中江和仁、主演は長澤まさみ高橋一生だった。2015年に行われた第1回「TSUTAYA CREATERS' PROGRAM」のグランプリ作品らしい。

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中江和仁は、もともとCM制作の監督をしていたそうだ。本作『嘘を愛する女』の映像に関して言えば、クセのない、受け入れられやすい映像であったと思う。瀬戸内での映像など、美しい描写もいくつかあった。このクセのない映像は、CM制作仕込みのものなのかと思いを巡らせた。

俳優らの演技に関して言及する。高橋一生はとても上手かった。起きている時の演技はもちろんだが、くも膜下出血で倒れ、病室で寝ている描写において、瞼をピクリとも動かさない演技に、驚嘆した。長澤まさみの演技には、少々不満だった。彼女は綺麗だし、スクリーン映えする。しかし、演技に関して言えば、演技が演技くさい。病室で、高橋一生に「目を覚まして」というシーンがあるのだが、その演技に特に演技くささを感じた。

助演に関しても少し言及しておく。探偵の海原匠を演じた吉田鋼太郎の演技は、圧巻であった。本当に、さすがという感じだった。また、意外にも心葉を演じた川栄李奈の演技が、上手いと感じた。不思議ちゃんキャラを巧みに演じていたように思う。
意識を失った小出桔平(高橋一生)が書いた小説をもとに、川原由加里(長澤まさみ)が彼の本当の姿を探るという物語は、ワクワクした。最後まで飽きずに見ることができた。結末に関して言及すると、小出桔平の妻のサイコパスな描写は、過激だったし怖かったが、興醒めはせず引き込まれた。

ラストシーンは、小出桔平が目を覚ましたところでエンドロールが流れる。ハッピーエンドだ。病室で桔平の看病をする由加里の映像がビビッドで美しかった。今でも鮮明に覚えている。他の方々のレビューを見る限り、あまり評価の高い映画ではないようだが、個人的にはとても楽しめた。